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グスターボ・ドゥダメル指揮シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラの初来日公演

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 12月19日(金)、グスターボ・ドゥダメル指揮シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ(SBYO)のコンサートに行ってきました。広島厚生年金会館で午後7時開演で、前半はマルタ・アルゲリッチ(ピアノ)、ルノー・カプソン(ヴァイオリン)、ゴーティエ・カプソン(チェロ)を迎えてのベートーヴェンのピアノ、ヴァイオリンとチェロのための三重協奏曲、後半はマーラーの交響曲第1番「巨人」というプログラムでした。
 ドゥダメルとSBYOのコンビは、このブログの1月のCDレビューでも紹介されましたが、今世界でも注目されている南米ベネズエラの音楽教育システムから生まれてきたそうです。<エル・システマ>と呼ばれるシステムで、「音楽活動により貧困から生じる悪循環を断ち切り、‥‥音楽を学びたい全ての子どもたちに(無償で)楽器を与え指、‥‥若い演奏家を育て演奏の場を作る。」という理念のもと、1975年に街角のガレージで11人のメンバーで立ち上げた組織が、33年間でメンバー30万人、指導者1万5千人により構成される一大ネットワークに成長し、今では90以上の児童オーケストラ、130以上のユース・オーケストラを運営しているということで、これらに参加している子どもたちの75%が貧困層に属しているそうです。SBYOはその頂点に位置するオーケストラで、ドゥダメル自身も<エル・システマ>の中で育った音楽家です。
 前半のベートーヴェンの三重協奏曲。アルゲリッチの存在感の大きさは別格で、すべてが彼女を中心に回っているような印象でした。でも、他の奏者を支配するというものではなく、他のソリスト、オケそれぞれが生き生きと自分の表現をしながらも、しっかりと彼女が中心にいるという感じでしょうか。ヴァイオリンのルノー・カプソンは、身体を大きく揺り動かすことのない端正な演奏ぶりですが、美しい音色で構築感のしっかりした伸びやかな音楽を聞かせてくれ、弟のチェロのゴーティエ・カプソンは、ピアノ、ヴァイオリン、指揮者それぞれの方に顔を向けながら身体全体で表現しており情熱に溢れていました。オケは、ユース・オーケストラですから当然ではありますが、皆驚くほど若いにも関わらず、機能性が高く緊密なアンサンブルで、ドゥダメル(27歳という若さ!)と一体となって、躍動感溢れる伴奏を聴かせてくれました。勿論、演奏終了後は拍手が鳴り止まず、何回も舞台に呼び出されていました。(驚かされたのは、コントラバス奏者がジャズ・ベーシストのようにみんな椅子を使わず立って演奏していたことです。自分の経験ではこれまでに見た記憶がありません。)
 後半はマーラーの巨人。通常100人程の編成のところですが、200人近くいるのではないかという巨大な編成で、舞台中楽団員で溢れ返らんばかり。こんな大編成でどんなになるのかと思いましたが、一糸乱れぬハイレベルなアンサンブルで高度な機能性を持っており、情熱的でパワー溢れる演奏で、全員が音楽を演奏する喜びを発していることが強烈に伝わってくる素晴らしいオケでした。ドゥダメルは小柄ですが、指揮は非常にエネルギッシュで躍動感があり、ダイナミックスの細かな変化や緩急の変化によって説得力のある壮大な表現をしていました。息の長い旋律も、引き締まった透明な響きで甘美な旋律を聞かせてくれ、細部まで確信に満ちた指揮ぶりでした。約1時間程の演奏時間ですが、息つく暇もなく、あっという間に終わってしまいました。特に、終楽章は最高の盛り上がりを見せ、凄まじい音圧で観客を熱狂の渦に巻き込み、ブラヴォーの歓声とスタンディング・オーベーションで拍手が鳴り止みませんでした。(ドゥダメルは、エモーショナルな部分において、観客の心を捉え、深く揺り動かす能力が高い指揮者だと感じました。この人は、録音で聴くよりもライブで体験する方が感動が大きく得られるし、聴く価値があると思います。27歳、今後どのように成長してゆくのか楽しみです。)
 アンコールは3曲。このコンビならではのパフォーマンスだと思いますが、南米人ならではのお祭り騒ぎ。最初は、バーンスタインの「ウェストサイド・ストーリー」からの「マンボ」。パートが休譜のときにはチェロやコントラバスは楽器をクルクル回しているし、第1ヴァイオリンやヴィオラは舞台の前に出てダンスしながら弾く始末です。2曲目のヒナステラの「マランボ」も同じ調子で、モグラ叩きのモグラのようにリズムに乗ってあちこちで奏者が立ち上がり、管楽器奏者は後ろで足を振り上げるなど大盛り上がりでした。陽気で力強く躍動的で生命感に溢れており、この人たちにとっては、音楽=生きることであるのだろうなということを実感しました。最後は、鳴り止まない拍手の中、チェロ以外は全員起立して「君が代」でコンサートは締めくくられました。

http://wwwz.fujitv.co.jp/events/art-net/clsc_01concert/392.html
(出演者はこのホームページでご覧ください。)

by gakuyuuehime | 2008-12-25 12:24 | 国内楽信  

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