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フィラデルフィア管弦楽団の日本公演

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5月25日(日)、西宮の兵庫県立芸術文化センターで、クリストフ・エッシェンバッハ指揮フィラデルフィア管弦楽団の日本公演を聴きました。プログラムは、ブリテンのヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン・ソロは五嶋みどり)とショスタコーヴィチの交響曲第5番の2曲。

 前半はイギリスの作曲家ブリテンのヴァイオリン協奏曲。プログラムによると、今回のツァーでエッシェンバッハと曲の選定をするときに、五嶋みどりの方から提案し、エッシェンバッハも同意したそうです。1939年、ブリテン26歳のときに作曲されたもので、第二次世界大戦の前、スペイン市民戦争の最中に同地を訪れ、その時に出会ったブローサというヴァイオリニストのために書かれた作品だそうです。解説には3楽章形式とありますが、切れ目なく40分近く続く、ヴァイオリン協奏曲としては長大な曲です。ブリテンは、イギリスが第二次世界大戦に突入した後も良心的兵役拒否を貫いたほどの平和主義者だったということですが、第二次世界大戦前の時代の不安や平和への祈りが込められた名曲だと感じました。五嶋みどりの音はそれほど色彩的ではありませんが、ピアニシモでもピンと張り詰めた美しい音がホールを満たし、緊張感と叙情性の間を行き来しながら、最後には澄み切った世界を提示してくれました。(やはりライブはいいですね。CDもほとんどなく普段聴く機会がない曲であっても、アーティスト自身が認める名曲をこうして発見できるのですから。)

 後半のショスタコーヴィチの交響曲第5番、「革命」という副題で有名な曲ですね。暗く重い第1~3楽章から壮大なクライマックスの第4楽章へと、「暗から明」、「苦悩から勝利」への図式でよく知られる曲ですが、この曲を作った頃のショスタコーヴィチはスターリン独裁下のソビエトで「体制への反逆者」として批判され、それまでの名声を完全に失っていたそうです。名誉回復を図って発表されたこの曲は、外見上は社会主義リアリズムを見事に表現しており初期の目的を果たしましたが、そのような背景があるせいか単純な図式では推し量られないアイロニーが隠されているようです。エッシェンバッハの指揮は、これまで聴いたことのないゆっくりしたテンポを貫いており、楽譜に書かれたすべての音が眼前に克明に描き出されているような感覚を覚えました。1~3楽章は重く暗い緊張感に支配された演奏で、クライマックスは輝かしく壮麗な響きに満たされてはいるが、裏には熱い情熱や悲劇性が潜んでいることを感じさせてくれました。オーケストラも、これは世界最高水準のレベルの音、滑らかで美しいヴァイオリン、深い響きの低減楽器、輝かしく高性能な管楽器が、精緻で完璧なスケール感大きな合奏を聴かせてくれました。(なお、オケは、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが左右に開き、第1ヴァイオリンの後方にチェロとコントラバス、第2ヴァイオリンの後方にヴィオラが配置される「対抗配置」の並び方を採用していました。)

 この日のコンサートは、五嶋みどりの充実したソロ、オケの名人芸、エッシェンバッハの表現力、大変素晴らしい名演だったと思います。
(宮脇)

by gakuyuuehime | 2008-06-26 20:35 | 国内楽信

 

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