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欧州楽信(第10回) 文:三宅坂幸太郎(音楽ジャ-ナリスト)

ワーグナーお家騒動決着か? バイロイト音楽祭の後継問題
ワ-グナ-家の人々(左からカタリ-ナ、ウォルフガング、グドルン

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ワーグナー・オペラの聖地「バイロイト音楽祭」のウォルフガング・ワーグナー総監督がこのほど、今年8月末の音楽祭終了までに引退する意志を運営組織のワーグナー財団に伝えた。また、争いが続く後継者問題で、娘ら2人を後継指名し、決着を図る意向を示した。
 報道によると、リヒャルト・ワーグナーの孫にあたる総監督は、資金提供者らに送った4月8日付の書簡の中で引退を示唆するとともに、娘のカタリーナと前妻の娘エファ・ワーグナー・パスキエを後継者に挙げた。2人は音楽祭の実行委員会が開催する会議までに、今後の運営方針などを共同で提示する予定だという。
 健康問題を抱える総監督の後継をめぐっては、エファ、総監督の兄ヴィ-ラントの娘であるニケ、総監督の妻グドルンらを巻き込む骨肉の争いが近年続いていた。そこへ最近、カタリーナが新たに後継者に名乗りを上げ、総監督も支持。経験の浅さを補うため、音楽祭を仕切ってきた妻グドルンを後見人に据える構想を描いていたが、彼女が昨年末に急死し、総監督の思惑が外れた。
 音楽祭は赤字に苦しむ状況にあり、バイエルン州などが補助金増額の条件として後継者問題の早期解決を迫っていたことから、「折衷案」として共同後継者を提案し、幕引きを図ろうとしたものとみられる。
 バイロイト市のホール市長は「この引退表明で、財団の規約により後継者を決めることが可能になった」と述べている。財団は総監督が引退した後の9月1日に会合を開き、後継者指名に向けた作業を進める方針という。

相次ぐア-ティストの引退
マキシム・ヴェンゲ-ロフ欧州楽信(第10回)  文:三宅坂幸太郎(音楽ジャ-ナリスト)_d0083273_19321541.jpg
 現在最高のヴァイオリニストのひとりであるヴァイオリン奏者のマキシム・ヴェンゲーロフはこのたび「タイムズ」紙へのインタビューに答え、正式にヴァイオリンからの引退を表明した。今後はイスラエルに自ら作った自分の学校と指揮が中心となる模様である。
 ヴェンゲーロフは現在34歳。1974年にロシア・ノヴォシビルスクに生まれ、ザハ-ル・ブロンに師事。10歳でデビュ-。バレンボイム、ロストロポ-ヴィチ、ゲルギエフ、マズア、メ-タ、ヤンソンスなどの現代の名指揮者たちから絶賛され、数多くの共演を重ねるとともに、数々の録音を続けてきた。しかしながら昨年ごろから肩の痛みに苦しんでおり、たびたび公演をキャンセルしていた。





アルフレ-ト・ブレンデル
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また、世界的に著名なピアニストのひとりであるアルフレ-ト・ブレンデルが、今年12月に引退する予定であることが分かった。ブレンデルの代理人が明らかにした。引退後は後進の指導に力を注ぐとのこと。ブレンデルは77歳。1931年、北モラヴィア地方のヴィ-ゼンベルクに生まれ、はじめは音楽教師になろうとしていたが、その才能を認められ、1948年にグラ-ツでリサイタル・デビュ-。翌年のブゾ-ニ国際コンク-ルで4位になり、ウィーンでのコンサート・デビューを飾った。1960年代以降次第に国際的評価を得、華麗さや派手さはないものの、中庸を行く知的で正統的な解釈で多くの音楽ファンを惹きつけた。アバド、ム-ティ、マリナ-、ラトルらから絶大なる信頼を得てしばしば共演するとともに、録音も数多く残している。また、カラヤン生誕100年を記念し今年から創設されたカラヤン賞の第1回受賞者に選ばれている。引退公演は今年12月18日にウィ-ン楽友協会で、マッケラス指揮ウィ-ンフィルによって行われる。









安永 徹
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また、ベルリンフィルの第1コンサ-トマスタ-の安永徹が今シ-ズン限りで退団することがわかった。彼は今後、活動の場を日本に移すことになる。
安永は1951年福岡生まれ。カラヤン時代の1977年にベルリンフィルに入団し、1983年に第1コンサ-トマスタ-に就任。カラヤン、アバド、ラトルの歴代芸術監督に仕え、ちょうど今シ-ズンで25年間務めたことになる。








ム-ティ シカゴへ欧州楽信(第10回)  文:三宅坂幸太郎(音楽ジャ-ナリスト)_d0083273_19371655.jpg
イタリア指揮者、リッカルド・ムーティが2010/2011年のシーズンよりシカゴ交響楽団の常任指揮者に就任する。契約は5年。1973年に初めてシカゴ響を指揮したムーティは、昨年のヨーロッパ演奏旅行を大成功に導いている。ム-ティは2005年にミラノ・スカラ座の音楽監督の地位から去った後始めてのポストとなる。また同響はバレンボイムが2006年に同ポストを辞任したあと空席が続いており、暫定的にベルナルト・ハイティンクが首席指揮者として舵取りをしていた。














ウィ-ン国立歌劇場の新シ-ズン

ウィーン国立歌劇場の来シーズンは、9月5日、アレヴィ「ユダヤの女」で再開場する。新演出は4本。ドゥ・ビリー指揮、ゲオルギュー、アラーニャ出演でグノーの「ファウスト」(10月11日プレミエ)、ウェルザー・メスト指揮による「リング・ツィクルス」第3弾のワーグナー「神々の黄昏」(12月2日プレミエ)、音楽監督小澤征爾の指揮、キーンリーサイド、ヴァルガス、アンガー出演でチャイコフスキーの「エウゲニー・オネーギン」(3月7日プレミエ)そしてウェルザー・メスト指揮による「リング・ツィクルス」第4弾の「ラインの黄金」(5月2日プレミエ)。「リング」のサイクル上演は3回(5月5、6、8、10日/5月16、17、19、21日/6月6、7、9、11日)。そのほか12月22日にプッチーニ生誕150年を「ラ・ボエーム」で、5月25日に国立歌劇場140周年を「ドン・ジョヴァンニ」で祝う特別公演が行われる。また、服部譲二がモ-ツァルトの「魔笛」でデビュ-する(6月24、27、30日)

by gakuyuuehime | 2008-05-10 19:44 | 欧州楽信  

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